シルエットソフトを併用した糸リフトの効果とは?193人の臨床研究を美容外科医が解説

糸リフトのカウンセリングでは、「どの糸がよいのでしょうか?」「異なる種類の糸を組み合わせる意味はありますか?」というご質問をいただくことがあります。

糸リフトにはさまざまな種類があり、それぞれ構造や組織の支持方法が異なります。

私自身、患者様のたるみの状態や治療目的に応じて、Y LIFTとSilhouette Soft(シルエットソフト)を組み合わせた治療を行っています。

では、異なる種類の糸を併用した治療について、医学的にはどのような報告があるのでしょうか。

今回は、2019年に『Journal of Cosmetic Dermatology』に掲載された、193人を対象とする臨床研究を紹介します。

研究で確認された結果と、まだ明らかになっていないことを分けながら解説します。

1. 今回紹介する医学論文

論文タイトル

Outcomes in thread lift for face and neck: A study performed with Silhouette Soft and Promo Happy Lift double needle, innovative and classic techniques.

掲載誌: Journal of Cosmetic Dermatology
発表年: 2019年
対象: 193人
追跡期間: 術後6か月
DOI: 10.1111/jocd.12745

この研究は、Silhouette SoftとPromo Happy Lift Double Needleを使用した糸リフトについて、患者さんと医師による術後評価を調べたものです。

重要なのは、今回の研究がSilhouette Soft単独の研究でも、Y LIFTとの併用を検証した研究でもないという点です。

異なる吸収性糸を使用した治療の臨床成績として読む必要があります。

2. 研究の目的と対象患者

この研究の目的は、吸収性糸を用いた顔や首のリフトアップ治療について、術後の美容的な改善や臨床経過を評価することでした。

2016年1月から2017年5月に治療を受けた193人が対象となっています。

患者背景は以下のとおりです。

項目結果
対象人数193人
平均年齢52.22歳
年齢範囲25〜89歳
女性170人(88.1%)
男性23人(11.9%)

治療部位の内訳は、フェイスライン46.1%、中顔面33.7%、眉12.4%、首7.8%でした。

つまり、フェイスラインと中顔面の治療が全体の約8割を占めています。

これらは、実際の糸リフト診療でも相談の多い部位です。

ただし、治療部位によって糸の配置や組織の状態が異なるため、研究全体の結果が、すべての部位に同じように当てはまるわけではありません。

3. どのような糸を使用したのか?

研究では、主に以下の2種類の吸収性糸が使用されました。

Silhouette Soft

Silhouette Softは、糸に取り付けられた特殊なコーン構造を特徴とする吸収性スレッドです。

コーンが組織を捉えることで、引き上げた組織を支持する仕組みを持っています。

一般的なコグ付き糸とは、組織への作用の仕方が異なります。

Promo Happy Lift Double Needle

こちらは、両端に針を備えた吸収性のスレッドで、コグ構造を利用して組織を支持するタイプの糸です。

両端の針を用いた挿入方法により、目的とする組織に応じた糸の配置が可能です。

Y LIFTで使用している糸と同じような素材と構造の糸だと思っていたければと思います。

異なる構造の糸を組み合わせるという考え方

この2種類の糸は、組織を支持する構造や挿入方法が異なります。

そのため、それぞれの特徴を生かして治療を設計するという考え方には、臨床的な合理性があります。

ただし、構造が異なる糸を組み合わせることと、実際に単独治療より高い効果が得られることは別の問題です。

併用による優位性を確認するためには、単独治療との比較が必要になります。

4. 治療効果はどのように評価されたのか?

この研究では、術後1週間、1か月、3か月、6か月に経過観察が行われました。

評価には、GAIS(Global Aesthetic Improvement Scale)という、美容的な改善度を評価する尺度が使用されています。

患者さん自身による評価に加え、2人の外科医による評価も行われました。

GAISは、治療前と比較した見た目の改善を段階的に評価する方法です。

一方で、3D画像によるリフト量の測定などとは異なり、評価者の判断が含まれます。

したがって、GAISに基づく良好な評価は、必ずしも物理的な引き上げ量が維持されていることを意味しません。

この違いは、糸リフトの持続性を考えるうえで重要です。

5. 研究結果:6か月後も良好な患者評価

研究では、患者さんと2人の外科医による評価について、次の結果が報告されました。

評価者術後1週間術後6か月
患者さん94%99%
外科医①94%99%
外科医②83%98%

患者さんによる評価は、術後1週間の94%から、6か月後には99%となっています。

また、外科医による評価でも、6か月時点で良好な結果が報告されました。

なぜ、6か月後の評価が高かったのか?

この結果は興味深いものですが、数字の解釈には注意が必要です。

術後の腫れや皮膚のひきつれが時間とともに落ち着くことなどが、見た目の評価に影響した可能性は考えられます。

しかし、今回の研究結果だけで、評価が改善した理由を特定することはできません。

また、94%から99%への変化を、そのままリフトアップ効果の増加と解釈することもできません。

この研究で示されたのは、6か月時点でも患者さんと医師による良好な評価が報告されたということです。

6. 合併症についても理解しておきたい

糸リフトの臨床研究を読む際には、美容的な改善だけでなく、合併症についても確認することが重要です。

この研究については、後年の糸リフト合併症に関するレビューで、次の頻度が整理されています。

報告された症状割合
内出血40.9%
皮膚のくぼみ28.5%
腫脹18.1%
疼痛5.2%

これらは、研究で使用された糸、挿入方法、対象患者、評価方法などの条件に依存する数字です。

すべてのSilhouette Soft治療で同じ頻度の合併症が起こるという意味ではありません。

また、症状の程度や持続期間については、原著の詳細な記載を確認して解釈する必要があります。

糸リフトでは、良好な仕上がりを目指すことと同時に、術後の腫れ、内出血、凹凸、ひきつれなどのリスクを十分に説明することが大切です。

7. この研究から「併用すると長持ちする」と言えるのか?

ここが、私が特に重要だと考える部分です。

今回の研究では、異なる吸収性糸を使用した治療について、6か月後まで良好な評価が報告されました。

一方で、Silhouette Softを使用しなかった比較群は設けられていません。

そのため、この研究からは以下の点を判断できません。

  • Silhouette Softを追加することで、単独治療よりリフトアップ効果が高まるか
  • 併用によって、持続期間が何か月延長するか
  • どちらの糸が、治療結果にどの程度寄与したか

さらに、追跡期間は6か月であるため、1年後や2年後の持続性についても、この研究からは分かりません。

つまり、6か月後の良好な評価を示した研究ではありますが、Silhouette Softの追加による持続期間の延長を証明した研究ではありません。

これは、研究結果が否定的であるという意味ではなく、研究の目的とデザインから判断できる範囲が限られているということです。

8. 美容外科医としての考察

私は、糸リフトにおいて、使用する糸の種類だけでなく、どの組織をどの方向に移動させ、どの位置で支持するかという治療設計が重要だと考えています。

顔のたるみは、皮膚の柔らかさ、脂肪の量や位置、支持組織の状態などによって異なります。

そのため、すべての患者さんに同じ糸を同じ方向に挿入すればよいわけではありません。

私が行っているY LIFTでも、患者様の状態に応じて挿入位置や方向を調整しています。

また、持続性を重視する患者様には、Silhouette Softを組み合わせる治療をご提案することがあります。

Silhouette Softのコーン構造による組織支持の特徴を生かし、引き上げた組織をどのように支持するかを考えて配置しています。

ただし、これは今回の研究によってY LIFTとの併用効果が証明されたという意味ではありません。

異なる糸の特徴を生かした治療設計には意義があると考えていますが、実際の持続期間には個人差があり、併用による延長効果を正確な月数で示すことはできません。

患者様には、こうした研究結果と私自身の臨床的な考えを区別して説明するようにしています。

9. まとめ

今回紹介した193人の臨床研究では、Silhouette SoftとPromo Happy Lift Double Needleを使用した糸リフトについて、6か月時点でも良好な患者評価と医師評価が報告されました。

これは、異なる吸収性糸を用いた治療の臨床経過を知るうえで参考になる研究です。

一方で、単独治療との比較がないため、Silhouette Softの追加によって持続期間が延長するかどうかは明らかではありません。

私自身は、糸の構造や組織支持の特徴を理解し、患者様ごとのたるみの状態や治療目的に合わせて組み合わせを検討することが重要だと考えています。

糸リフトは、単に本数を増やす治療ではなく、顔の状態に合わせて組織の移動と支持を設計する治療です。

その考え方を大切にしながら、今後も医学的な知見を取り入れた治療をご提案していきたいと思います。


参考文献

原著論文

Rezaee Khiabanloo S, et al. Outcomes in thread lift for face and neck: A study performed with Silhouette Soft and Promo Happy Lift double needle, innovative and classic techniques. Journal of Cosmetic Dermatology. 2019;18(1):84–93.

DOI: 10.1111/jocd.12745

あわせて読みたい

合併症に関する参考文献

Facial Thread Lifting Complications in China: Analysis and Treatment. Plastic and Reconstructive Surgery Global Open. 2021.

あわせて読みたい
Facial Thread Lifting Complications in China: Analysis and Treatment - PMC Facial thread lifting technology has been applied for more than 30 years, with relatively few complications. In 2014, China approved polydioxanone thread (an ab...

※本記事は既報の医学論文を紹介・考察するものであり、筆者自身が実施した研究ではありません。

※糸リフトには、腫れ、内出血、疼痛、皮膚の凹凸、ひきつれ、左右差、感染、糸の露出などのリスクがあります。治療効果や持続期間には個人差があります。

Doctor's Profile

美容外科医10年目。東京・大阪を拠点に診療を行う。
専門は糸リフト、たるみ治療、ヒアルロン酸、ボトックスを中心とした切らないエイジング治療。一人ひとりの骨格や加齢変化を見極め、自然な美しさを引き出すことを重視する。美容医療は見た目を変えるだけでなく、自信と前向きな人生を支える医療と考え、医学的根拠に基づいた安全性と満足度の高い治療を追求している。

◉経歴
東北大学医学部 卒業
湘南美容クリニック
都内美容クリニック院長

2026年よりKAUNIS CLINIC(表参道)、SWAN CLINIC GINZA(銀座)、BAYASHI CLINIC(大阪梅田) 勤務

◉専門分野
糸リフト
たるみ治療
ヒアルロン酸注入
ボトックス治療
切らないエイジング治療
フェイスデザイン

◉所属学会・資格
日本美容外科学会 JSAPS
美容内科学会

◉執筆・監修
美容医療に関する情報を医学的根拠に基づいて発信。糸リフト、たるみ治療、ヒアルロン酸、ボトックスを中心に、患者が安心して治療を選択できる情報提供を行う。

コメント

コメントする

CAPTCHA